呼吸器・アレルギー疾患内科

【肺癌について】

概要と特色診療担当表医師紹介診療内容

 当院は尾張東部医療圏の地域がん診療連携拠点病院であり、当科でもガイドラインに従った治療を基本としつつ、より良い治療を目指して診療しています。現在の肺癌治療は主として外来で治療を継続していきますが、初回は入院で行い安全性を確認したうえで、外来化学療法センターと連携して診療しています。また名古屋大学を中心としたNPO臨床研究グループ(中日本呼吸器疾患研究機構(CJLSG))の一員として、さらに他の臨床研究グループとの共同研究においても、より良い治療方法の確立を目的に臨床研究に参加しております。新しい治療の開発のための治験をご紹介することもできます。
 当院は地域的に高齢の方が多いため合併症を持った方が多く、また間質性肺炎に合併した肺癌も多いですが、そのような対応が難しい方の治療にも取り組んでいます。当科では他の肺疾患と同様に、肺癌の患者さんにも積極的にリハビリテーションに取り組んでいます。
 肺癌の治療において、診断早期からの緩和ケアが重要と報告されていますが、当院には専従医を中心とした緩和ケアチームがあり、緊密に連携して診療にあたっています。またご自宅での治療を希望される場合には、がん相談支援センターと連携して在宅医療の体制を整えることができます。

 現在、日本において癌のなかでの最も死亡数が多いのが肺癌です。肺癌の死亡数は、男性では1993年に胃癌を抜いて一位となり、1998年には男女併せた死亡数でも一位になりました。2012年には約7万人の方が肺癌で亡くなられましたが、高齢者社会の到来を踏まえて今後も肺癌の死亡数は増えると予想されています。この頁では、肺癌の基礎知識や治療についての知識を紹介します。

主要部位別・年次別・性別・年齢調整死亡率

肺癌になりやすい人はどういう人ですか?

 いくつかの因子が肺癌発生の危険因子であることがわかっています。その中でも最も重要なものが喫煙です。喫煙者が生涯のうちに肺癌になる割合は20%以下ですが、肺癌になった方の80%以上が喫煙者であると言われています。また喫煙者が肺癌になる危険率は非喫煙者の10~20倍程度高いとも言われています。喫煙開始年齢が若い程、また喫煙量が多いほど肺癌になる危険が高い反面、喫煙者が早く禁煙を開始すればするほど肺癌の危険が低下します。受動喫煙(家族が喫煙者などの場合)も肺癌発生の危険を高くしますし、喫煙指数(一日のタバコの本数X喫煙年数)が同じであれば女性の方が肺癌になりやすいというデータもあります。
 喫煙以外の危険因子としては、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、塵肺、肺線維症(間質性肺炎)などの肺疾患がある方も、肺癌の発生率が高いと言われています。
 いずれにいても、最も大きな危険因子は喫煙と考えられますので、禁煙は肺癌の発生を防ぐためにも重要です。

どのような症状が起こりますか?

 肺癌になった方の症状としては、長く続く咳や痰、血痰、発熱、呼吸困難、胸痛などがあります。進行すると、食欲低下ややせてくるといった症状が出てくることもあります。しかし、これらの症状は一般に病気がある程度進行してから出現することが多く、健診などで無症状で発見される肺癌も多くあります。症状がでてから発見された肺癌は無症状で発見された場合と比べて、進行癌が多く、予後も悪いと報告されています。

どんな種類がありますか?

 大きく分類して4つの種類があります。腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌は併せて非小細胞肺癌と呼ばれます。それぞれ、肺癌全体の50%、30%、5%程度を占めます。これに対して小細胞肺癌は肺癌全体の15%程度と言われています。腺癌と大細胞癌は肺の末梢(端のほう)に発生することが多いのに対して、扁平上皮癌、小細胞肺癌は肺の中枢(中心の方で気管に近い側)に発生することが多いのが特徴です。進行の仕方や抗癌剤に対する反応の違いから、治療については、以前は非小細胞肺癌と小細胞肺癌に分けて考えるだけでしたが、現在は非小細胞肺癌の中でも扁平上皮癌かそれ以外か、また遺伝子の異常を伴っているか(EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子など)によっても治療法を分けて考えています。

どのような検査が必要ですか?

 胸部レントゲンで異常をみつけ、CTで肺癌が疑われるか確認します。肺癌の確定診断は病理検査によってなされます。病理検査とは、病変の一部の組織や細胞を採取して顕微鏡で観察し診断するものです。組織を採取する方法(生検)には、気管支鏡下生検、CTガイド(透視)下肺生検、胸腔鏡下生検などがありますが、(造影)CTなどの所見を参考に生検方法を選択します。最近では気管支鏡検査時に超音波検査を併用して従来難しかったような場所の生検も行っています。肺癌が確定した場合、組織型によっては遺伝子異常がないかを病理検査に追加して行います

肺癌の進行度はどのようにして判別しますか?

 一般にTNM分類が用いられます。Tはもとの肺癌そのものの大きさや周りの臓器への進達具合から決められます。Nは肺門(肺の中心の部分)や縦隔(左右の肺の間にあり、心臓や大血管がある場所)などへのリンパ節転移の程度で決められ、Mは癌性の胸水や他臓器への遠隔転移の有無によって決められます。このTNM分類によってI期~IV期までの病期に分類され、この病期と病状によって治療法を決定します。小細胞肺癌に限っては、TNM分類による病期以外に、肺癌が限局している段階(LD)と進展した段階(ED)の二つに分け、これによって治療の選択を行います。

治療方針

 肺癌の治療には、大きく分けて手術、抗癌剤を用いた化学療法(分子標的薬を用いた分子標的治療もここに含まれる場合があります)、放射線療法があります。肺癌の進行度(病期)やタイプ(非小細胞肺癌か小細胞肺癌、EGFR遺伝子変異の有無など)によってこれらのうち単独、または組み合わせて治療を行います。また新たな治療法として免疫チェックポイント阻害薬が開発され、非小細胞肺癌でも使えるようになりました。それぞれ、効果の違いや副作用や合併症の違いがありますので、治療を受ける際はこれらの治療の特徴について十分説明を受ける必要があります。また診断時より、疼痛などの症状を和らげるために、鎮痛薬などによる緩和医療も重要です。

治療に用いる抗癌剤にはどのような種類があるの?

 化学療法の基本となる白金製剤(プラチナ製剤)として、シスプラチン(ランダ(R)、ブリプラチン(R)、プラセド(R))やカルボプラチン(パラプラチン(R))があります。その他ペメトレキセド(アリムタ (R))、パクリタキセル(タキソール(R))、アルブミン懸濁型パクリタキセル(アブラキサン(R))、ドセタキセル(タキソテール(R))、ゲムシタビン(ジェムザール(R))、ビノレルビン(ナベルビン(R))、イリノテカン(トポテシン(R))、トポテカン(ハイカムチン(R))、エトポシド(ラステット(R))、ドキソルビシン(アドリアシン(R))、アムルビシン(カルセド(R))、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン(R))など、単剤または2剤の組み合わせを肺癌のタイプや進行度、年齢や全身状態に合わせて選択します。
 分子標的薬として、血管新生阻害薬のベバシズマブ(アバスチン(R))は扁平上皮癌以外の非小細胞肺癌、EGFR遺伝子変異陽性の場合ゲフィチニブ(イレッサ(R))、エルロチニブ(タルセバ(R))、アファチニブ(ジオトリフ(R))、ALK融合遺伝子陽性の場合クリゾチニブ(ザーコリ(R))、アレクチニブ(アレセンタサ(R))は、腺癌を中心に用いられます。

免疫チェックポイント阻害薬ってなんですか?

 免疫チェックポイント阻害薬は、がん免疫療法ともいわれますが、従来保険診療外で行われてきたようなワクチン療法などとは大きく異なるものです。
 以前から研究されてきた癌に対する免疫療法(がんワクチン療法の効果が十分上がらない理由として、免疫応答が過剰に働くことを抑制する免疫チェックポイントという、免疫にブレーキをかけるような仕組みの関与が大きいことが近年分かってきました。そこで、免疫チェックポイントにかかわる分子を標的とした、免疫チェックポイント阻害薬が新しい治療法として登場しました。
 ただ免疫チェックポイントは、免疫が過剰な攻撃をしたり正常な細胞を攻撃したりしないようにブレーキをかける役割を担っているため、自己免疫異常に関連したような新しい副作用が報告されています。ホルモンの異常や糖尿病、大腸炎、神経や筋の病気など、稀ですが従来の肺癌治療では経験しない重い副作用も報告されていますので、使用に当たっては慎重に判断し、十分な説明を行うようにしています。
 2015年12月よりニボルマブ(オプジーボ(R))が非小細胞肺癌でも使えるようになりました。現在、原則として従来の治療法で再発した場合に使用を検討します。

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